以前に、コラム「特殊建築物に該当するマンションとは?」にて、マンションが特定建築物に該当するかどうかをまとめました。
マンションが特定建築物に該当するかどうかは、都道府県や市区町村によって定められています。
マンション以外では、病院やホテル、商業施設、学校、老人福祉施設、美術館などの不特定多数の方が集まる大規模な建築物が特定建築物に該当します。それらの規模は、マンション同様に都道府県などの自治体で定められています。
建築基準法第12条によると、特定建築物に該当する建物は、有資格者が敷地や構造、建築設備を点検して、損傷や腐食、劣化状況を特定行政庁に報告しなければなりません。
このように法律で決まった点検のことを「法定点検」といいます。
建築基準法には、特定建築物の点検内容に「特殊な構造等」が含まれています。特殊な構造には、膜構造建築物の膜体と取付部材、免震構造が該当することが記載されています。
つまり、特定建築物に該当する免震建物は、免震点検を定期的に行い、その結果を自治体に報告する義務があります。(なお、膜構造建築物は、商店街のアーケードの屋根などのことです。)
法定点検では、具体的な点検内容は書かれていませんが、一般社団法人日本免震構造協会(JSSI)が免震点検の対象や点検方法、点検のタイミングなどを「免震建物の維持管理基準」として定めているので、それに準じて免震点検を行います。
免震構造は、免震ゴムやオイルダンパー、エキスパンションジョイント、可撓継手など、さまざまな装置で構成されています。それらの免震装置の点検のことを「免震点検」と呼んでいます。
免震点検の種類には、目視点検を主体で行う「通常点検」と、計測点検を主体で行う「定期点検」があります。
通常点検では、免震装置に異常がないか、ボルトの緩みがないかなど、目視と触診での点検を行います。
定期点検では、通常点検での内容に加え、角度計やインサイドマイクロメータなどを用いての計測点検を行い、免震装置に異常がないかを計測点検します。
通常点検や定期点検が終了したら、点検内容を報告書にまとめてクライアント様に提出いたします。
免震点検では、主に次のような箇所を点検します。もちろん、建物によって使用されている免震装置は異なります。装置別点検の詳細はこちらのページをご覧ください。
特定行政庁に報告時期は、自治体によって若干異なりますが、基本的に毎年報告するところと3年毎に報告するところがあります。調査方法は目視で確認することになっています。
また、3年毎に報告する自治体では、 「 3年以内に免震装置の点検を実施した記録がある場合は、そのときの報告内容を確認して特定行政庁に報告してもよい」とされています。
記録報告は、全装置数の半数でかまいません。例えば、免震ゴムが100機あったら50機の点検結果を報告します。
報告は半数分でかまいませんが、目視点検を実施する台数はすべて行った方がよいでしょう。どの免震装置に異常があるかわかりませんので、 目視点検は全台数を行った方がよいです。
一部の自治体の免震点検の報告義務について、当社にて調べましたので、ご参考になさってください。
その他の地域では、免震建物がある所在地を管轄する自治体にお問い合わせいただくことが理想的ですが、当社にご相談いただけましたら、アドバイスさせていただきます。
当社にお電話をいただき、電話に出た者に「免震建物の点検頻度を調べたい」とお伝えください。(マテリアルリサーチ代表:03-3356-1107)
JSSIが定めている目視点検の内容は、
免震部材、設備配管、電気設備、免震層、建物外周部、クリアランス、耐火被覆、エキスパンションジョイント、維持点検用マーキング、免震部材取付部、免震建物の表示、ケガキ式地震変位記録装置、別置き試験体(下げ振り装置)、その他の不具合について、見回りを中心とした点検。
です。特に、鉄部塗装の劣化や発錆、すべり系支承のすべり面の汚れ、オイルダンパーのオイル漏れ、建物外周部のクリアランスを入念に点検します。
なお、「免震点検の種類」でも述べましたが、このような目視点検は毎年行うことが推奨されており、この免震点検のことを「通常点検」と呼んでいます。通常点検の詳細はこちらをご覧ください。
なお、計測点検主体の免震点検のことを「定期点検」と呼んでいます。定期点検を行うタイミングは、竣工後5年目と10年目、それ以降は10年毎に行うことが推奨されています。定期点検の詳細はこちらをご覧ください。
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