免震鋼材ダンパーは、地震の衝撃を吸収して、振動を抑制するための免震ダンパーの一種です。大きなバネの鋼材を用いているので、私たちのような免震点検業者では「鋼材ダンパー」と呼ばれています。
免震建物では、地震が発生するとその揺れに合わせて建物が地面から移動します。揺れが収まったら、建物を元の位置に戻さなくてはなりません。免震鋼材ダンパーは、建物の位置を元に戻すバネの役割も果たします。
免震鋼材ダンパーの種類は、バネの構造で大きく2種類に分けられます。U型鋼材ダンパーと鋼棒ダンパーです。
U型鋼材ダンパーの構造は、写真のように、U型の鋼材バネが十字に設置されており、さまざまな方角の揺れにも対応できるようになっています。U型の鋼材バネが五角形に配置されたものもあります。
少し専門的な話をすると、U型鋼材ダンパーは揺れる方角によってバネの強さが異なります。U型のバネに対して水平な方角の揺れの場合と、斜めの方角の揺れでは、バネの曲がり具合が変わるため、強さが異なってきます。
免震鋼材ダンパーは、定期的に免震点検を行う必要があります。免震鋼材ダンパーの免震点検には、毎年行う目視主体の通常点検と、5~10年に1回行う計測主体の定期点検があります。
これらの点検は、暗い場所での点検になることもあり、素人が行うと、本来なら発見すべきエラーを見落としてしまうことがあります。やはり、免震建物点検技術者の資格を取得し、免震点検に熟達した者が行うことが大切です。
免震鋼材ダンパーは、表面に防錆塗装がなされているので、湿度が高い免震層に設置されていても、ある程度の発錆は抑制されます。しかし、経年劣化や傷、地震発生時の揺れなどにより、塗装にヒビが入ったり剥がれたりすることがあります。そため、1年に1回程度の頻度で目視点検をし、塗装の状態をチェックすることが大切です。
もし、鋼材部が錆びていたり、塗装が剥がれていたりした場合は、タッチアップ(補修)を行う必要があります。
定期点検では、インサイドマイクロメータや角度計を用いて、基準の位置からどの程度移動しているのかを測定します。その移動が基準値を超えているようであれば、建物に設置されている免震装置に異常がある可能性があります。
免震装置の異常は、免震鋼材ダンパーの計測点検だけでなく、免震下げ振り装置の状態などもチェックして、トータルで判断することになります。
免震鋼材ダンパーは、地震の揺れによってバネ部が曲がるので、塗装にヒビが入ったり剥がれたりすることがあります。また、鋼材部にポツポツと錆が発生することがあります。鋼材部は、材質が鉄ですので、何もしなければ錆びたり、すでに錆びている場合は錆びがひどくなったりします。
タッチアップせずに放置しておくと、鋼材部の錆がひどくなり、免震鋼材ダンパーが持っている本来の機能を、地震発生時に発揮できない可能性があります。
やはり、免震鋼材ダンパーを含む免震装置は、定期的に目視点検をして、塗装に問題がないか発錆していないかを確認する必要があります。そして、鋼材部が錆びていたり、塗装にヒビや剥がれがあったりしたときには、その部分をタッチアップ(補修)する必要があります。
タッチアップの方法は、補修が必要な部分をヤスリ掛けし、塗料を塗ります。もし、バネ部分の錆がひどい場合は、バネの性能が劣化している恐れがあるので、バネ部の交換になる場合もあります。
発錆部や塗装の劣化部のタッチアップは、当社でもワンストップ対応をいたしておりますので、お声がけください。
後日に再度伺ってタッチアップを行うことが多いですが、小さな錆であれば、すぐさまそれが広がって免震鋼材ダンパー全体に影響するわけではありませんので、次回の免震点検のタイミングに合わせて、免震点検と同時にタッチアップをすることもあります。
免震装置の塗装については、こちらのページもご覧ください。
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