免震点検いろは

免震装置の応急点検とは

免震点検には、実施内容や実施のタイミングによって、点検に名称が付いています。それらの種類については、以前に投稿したコラム「免震ゴムの点検内容」に詳細に記載しています。

今回のテーマは、応急点検についてです。

免震装置の応急点検とは

応急点検とは、地震や強風で免震建物が大きく揺れた後に行う免震点検のことです。建物が揺れた後は、免震装置がダメージを受けていることがあります。目視主体の点検を行うことで、免震装置に異常がないかをチェックします。

一般社団法人日本免震構造協会(JSSI)では、概ね震度5弱以上の大きな地震の後や、台風や突風で概ね風速30m/sを超える強風が吹いて免震建物が揺れた後に行うことを推奨しています。

応急点検によって、免震装置のダメージを確認し、修理や補修の必要性の有無をチェックします。

応急点検の詳細な内容については、「免震装置の応急点検」をご覧ください。

応急点検のタイミング

大きな地震が発生した直後は、被災した免震建物の安全確保をすることが大切です。特に、人が出入りする箇所に設置されたエキスパンションジョイントの不具合をチェックしてください。

大きな地震が収まり、余震も発生しなくなってきたら、自分たちの生活や職場復帰をしていきます。そのタイミングで応急点検のご相談をいただくことが多いです。大きな地震が発生してから1カ月程度で点検の必要性を議論し、2カ月程度経過してから点検実施に至るという具合です。

点検実施日は、点検作業員の宿泊の確保をするなどして日程が決まります。

現地までの交通手段や復興の状況をあらかじめお教えください。応急点検が実施される前日までに、応急点検を実施する箇所に、点検作業員が出入りできるかどうかの確認をしておいてください。

なるべく早く応急点検をした方がよい?

大きな地震の直後1週間程度は、最初の大地震の規模と同程度の地震に注意することを、気象庁が述べています。(気象庁:大地震後の地震活動(余震等)について

そのように、応急点検を行った後に、また大きな地震が発生したら、再度応急点検が必要になるため、効率的ではありません。

安全かどうかのご判断は建物の管理者にお任せしますが、何度も強い地震に遭遇した熊本地震でも、私どもが応急点検に入った免震建物はすべて倒壊していませんでした。

また、地震発生からまだ日が経過していない段階での応急点検は、点検作業員の身の安全の保障が優先なのでお断りしております。

やはり、余震が発生しなくなってからの応急点検をおすすめいたします。

免震装置ごとの不具合

大きな地震の直後でよく壊れる免震装置は、鉛ダンパーとU型鋼材ダンパーです。そもそも、それらのダンパーの仕組みは、ダメージを負って揺れを吸収してくれる構造だからです。そのため、表面は問題なくても、内部は金属疲労している可能性が高いのです。

鉛ダンパーは亀裂が入ることが多いので、損傷を発見しやすいです。U型鋼材ダンパーは亀裂が発生しにくいので、損傷を発見しにくいため、塗装の剥がれ度合でどの程度の力が加わったのかを判断します。

免震ゴムやすべり支承などの免震装置は、建物の自重を支えているので、壊れてはいけません。また、ダンパーであっても、オイルダンパーや減衰こまは問題ないことが多いです。

免震装置ではありませんが、エキスパンションジョイントは破損することが前提になっていることがあり、その場合は、たいてい壊れています。コンクリート製のものは割れたり、鉄板製のものは、くの字に曲がったりすることもあります。地震が強くて、エキスパンションジョイントが跳ね上がるぐらいの衝撃があった場合は、角が壊れていることもあります。

発災直後にオーナー/管理会社が行うべきこと

免震建物であったとしても、万が一に備えて、地震が発生したときに、そこの建物にいてはいけません。免震建物の住民や建物利用者には、安全な場所に避難することを推奨すべきです。

免震建物は、建物自体にはダメージがなさそうでも、基礎部にダメージを受けていることもあります。免震クリアランスが短いという指摘があった建物では、外構の樹木や駐輪場の屋根、外灯などに建物がぶつかってしまい、外壁の落下がある可能性も否定できません。

免震建物によっては、階段室だけでっぱっているものがあります。その場合、階段室部分がずれ落ちたりすることがあります。

建物内外で、大きなクラックが入っているところは、立ち入り禁止にすべきでしょう。

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