免震点検エピソード

免震装置の養生カバーが付いたままの物件

神奈川県にある、中層の免震マンションでのエピソードです。マンションの管理会社様から、「マンション全体を、5年時の定期点検をしないといけない」ということで、当社にご依頼をいただきました。

CLB直動転がり支承に付いたままの養生カバー

そのマンションは、竣工してから5年が経過しており、別の免震点検会社によって竣工点検は行われたそうですが、「それ以降に免震点検をしたことがない」ということで、定期点検を実施することになったそうです。

免震層は地下にあり、そこにはCLB直動転がり支承が設置されていましたが、その免震装置すべてに竣工時の養生カバーが取り付けられたままになっていました。

養生カバーが付いたままでも、免震装置の動作に支障をきたさないものもあります。CLB直動転がり支承の養生カバーも、そのうちの一つです。

養生カバーの役割

養生カバーの役割は、免震装置を工事中に誤って傷付けないようにすることです。本来は、養生カバーは竣工点検の前に取り外すことが免震装置の仕様書にも書かれているはずです。

しかし、CLB直動転がり支承のように、免震装置の動作を妨げないように養生カバーが設置されているものがあります。

養生カバーが免震装置の動作を妨げない場合、「免震装置に異物が堆積したり、傷ついたりしないようにする」という目的で、養生カバーを設置したままでも良いと考えます。

CLB直動転がり支承の養生カバー

写真は、CLB直動転がり支承ですが、写真の赤色の鉄板が養生カバーです。メーカーからの納入時に取り付けられていて、コの字型の鉄板が設置され、ターンバックルで固定されています。

さすがにターンバックルが取り付けられたままのことはありませんが、養生カバーは常設されているものと勘違いしているお客様もいるぐらいです。当社のような点検会社としては、養生カバーを取り外すことを推奨するのですが、「防塵カバーの代用として設置したままにしてもらいたい」というお客様もいます。

別の免震マンションの現場では、金属製の養生カバーは取り外されていましたが、塩ビ管を半月に切ったような即席のカバーが乗せてあったり、透明なラッピングがしてあったりと、いろいろな養生を見かけました。

透明なラッピングは、装置を衝撃から守ることはほとんど不可能ですが、CLB直動転がり支承のグリースが乾燥したり、ゴミが付着したりすることを防止するために設置されることがあります。

コの字型の養生カバーですと隙間があり、グリースの乾燥やゴミの侵入があります。竣工してしまった免震建物は、免震層内での工事はほとんど行われないため、透明なラッピングで事足ります。

コの字型の養生カバーの免震クリアランス

CLB直動転がり支承が動作すると、コの字型の養生カバーは動作に合わせて移動するようになっています。コの字型の養生カバーは金属製の硬いものなので、移動する先に梁や設備配管などがあると、それらにダメージを与えかねません。

免震点検では、コの字型の養生カバーの免震クリアランスが基準値以上にあるかを確認し、「コの字型の養生カバーが移動しても、他の建築物にダメージを与える恐れがないかどうか」を判断いたします。もし問題なければ、コの字型の養生カバーを残したままにしても良いと考えます。

もし、ご自身が管理されている免震装置に養生カバーが付いていて、どうしたら良いのか迷ったら、当社の免震点検をご利用いただけたら幸いです。

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