免震点検いろは

免震下げ振り装置とは

免震下げ振り装置とは

免震下げ振り装置

免震層内に、建物側に三角錐を逆にしたような形状の錘を吊り下げて、地面側に目盛が入ったプレートが設置してあることがあります。それを「免震下げ振り装置」、略して「下げ振り」といいます。

免震下げ振り装置は、免震建物であればほぼすべての建物に設置してあります。

免震下げ振り装置を用いて、建物が地面の基準位置からどれぐらい移動したかを計測することができます。

免震下げ振り装置の構造

免震下げ振り装置は、主に錘側とプレート側の2つのパーツに分かれています。

錘は、赤色の三角錐を逆さにして、ワイヤーでつるすようになっています。ワイヤーの上部はL型の金具を梁などにボルトで固定します。

プレートには目盛が刻まれていて、錘を設置した後に、錘の針がプレートの中央になるように設置します。プレートを設置するときは、きちんと中央が出るように、レーザーなどを用いて調整します。

プレートの材質には、プラスチックとステンレスがあります。長年設置されることを考えると、耐久性が高く腐食しにくいステンレス製のプレートがおすすめです。

免震下げ振りの役割

免震下げ振り装置での点検

免震下げ振り装置の役割は、建物の位置がどれぐらいずれたかを計測することです。免震下げ振り装置を設置した時点を基準として、その日から経年でどれぐらい建物がずれていったかを、定期点検時に計測します。

免震建物は地震があったら若干移動することがあり、ゆっくりと元に戻ることがあります。免震下げ振り装置で建物の位置を計測するときは、地震が発生した直後ではなく、平常時に行います。

建物位置を計測したときに、50mm以上のズレがあれば、管理基準値を超えてしまっているので、免震装置に異常がある可能性が高いと判断できます。

免震下げ振りを設置すべきか?

竣工検査や初めての免震点検時に、免震下げ振り装置を設置し忘れいていることを発見することがあります。そのときに、「免震下げ振り装置は設置すべきでしょうか?」と聞かれることがありますが、答えは「設置すべき」です。

免震点検の報告では、免震建物維持管理基準に従って建物の移動を記録します。その記録を免震下げ振り装置で行うためです。

また、免震下げ振り装置があると、建物や免震装置の異変に気付くことができます。もし、免震装置に異常を発見したときに、どのような経緯で異常が発生したのか、またその異常は問題ないレベルなのかを、さまざまな計測データを用いて判断します。一種類でも多くのデータがあれば、より正確な判断ができますが、その一つとして、免震下げ振り装置の数値を用いることができます。

ケガキ式地震変位記録装置との違いは?

ケガキ式地震変位記録装置

免震下げ振り装置に似た装置として、ケガキ式地震変位記録装置があります。この装置は、ステンレスのプレートの上にケガキ針を走らせて、地震の軌跡を調べることができます。

ケガキ式地震変位記録装置も設置時にプレートのゼロ位置調整を行いますので、現在の建物位置がどの方向に何mm移動したのかを調べることが可能です。

ケガキ式地震変位記録装置は、免震下げ振り装置と大きく異なることは、「ケガキ式地震変位記録装置のプレートは交換される」ということです。大きな地震が発生し、軌跡を描いた後は、その軌跡から免震装置の損傷度合を調べることをしますが、その後に新品のプレートに交換してゼロ調整します。

つまり、ケガキ式地震変位記録装置はプレートを交換してしまうと、中心がリセットされるので竣工検査からの建物の移動を計測することができなくなるため、ケガキ式地震変位記録装置で免震下げ振り装置の代用はできません。

このように、免震下げ振り装置は竣工時からの建物の移動を計測し、ケガキ式地震変位記録装置は地震の軌跡を調べるという、大きな役割の違いがあります。

免震下げ振り装置を設置するタイミング

免震下げ振り装置を設置するタイミングは、竣工検査のときです。竣工検査は、建物が建って竣工前に行う最終検査です。その時点での建物の位置を「ゼロ」として、免震下げ振り装置を設置し、これ以降の5年後、10年後などの定期点検で建物がどれぐらい動いたかを検束します。

免震建物が竣工したときに、免震下げ振り装置を設置し忘れていたとしたら、最初の免震点検のときに免震点検技術者がそれに気づくはずです。そのときに指摘事項として、免震下げ振り装置の設置し忘れが上がってきます。

そのときは、なるべく早めに設置すべきなのですが、まずは設計者や建物管理者に伝え、免震建物維持管理の資料を確認してもらった方が良いです。

免震下げ振り装置の設置方法

免震下げ振り装置の設置

免震下げ振り装置は、免震層内に数か所、決められた位置に設置します。

免震下げ振り装置を設置する方法は簡単です。まず、免震下げ振り装置を設置する場所を決め、そこに下げ振り錘を吊るすための金具を上部に取り付けます。そして、下げ振り錘を吊り下げ、長さ調整をします。下げ振り錘の高さは、プレートからおおよそ3cmの高さです。

次にプレートの設置ですが、建物の基礎にL型定規を当て基礎と並行になるように、そして下げ振り錘の真下になるように、プレートを置きます。レーザー墨出器を用い、プレートの中央が下げ振り錘の真下になるように調整し、地面に固定します。

プレートの固定方法は、ビス止めと接着剤を用いる方法があります。ビス止めはプレートの位置調整が難しいのですが、地面に強固に固定されます。接着材を用いる方法は、プレートの位置調整は容易なのですが、経年劣化で取れてしまう可能性があります。

当社では、ビス止めを用いています。

免震下げ振り設置後の注意点

たいていの免震建物では、免震下げ振り設置は竣工時に設置することを述べましたが、竣工検査のときやその後にも、いろいろな業者が免震層内で作業することがあります。

免震層内は暗いことが多いため、免震下げ振り装置の存在に気づかずに、下げ振り錘を脚立に引っかけるなどして、壊してしまうことがよくあります。

そのため、免震下げ振り装置を設置したら、下げ振り錘を吊るした状態にせず、梁の上に置いたり、下げ振り錘とワイヤーを丸めてマスキングテープで柱に貼り付けたりして、作業員が触れないようにしておくと良いでしょう。

マテリアルリサーチの免震下げ振り装置

マテリアルリサーチの免震下げ振り装置

当社では、免震点検だけでなく、免震下げ振り設置の製造・設置を行っています。竣工検査のときや、免震下げ振り設置が設置されていなくて指摘されたときに、ワンストップ対応が可能です。

当社の免震下げ振り設置は、プレートとビスがオールステンレスで錆に強いことが特長です。また、先ほどにも述べましたが、当社ではプレートをビス止めしていますので、接着剤を用いて固定する方法よりも耐久性が高いです。下げ振り錘は赤く色づいていますので、暗い免震層内でも目立つようにしています。

プレートの目盛は5mm、寸法は100mm角です。

免震ゴムが上下のずれの管理値は、一般的に50mm以内とされています。平常時に50mm以上にずれてしまったら、管理値を超えてしまっているので、免震ゴムに問題がある可能性が高いという判断ができます。

当社の免震下げ振り設置に使用されているプレートの寸法は100mm角ですので、もし下げ振り錘がプレートから外れていたら、確実に管理値を超えることになるため、免震ゴムの異常を発見しやすくなっています。

免震下げ振り装置の製造・設置についての詳細は、こちらをご覧ください。免震下げ振り装置を設置するなら、マテリアルリサーチまでお気軽にお電話をください。

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