球面すべり支承は、建物を地震から守る免震装置の中でも、アイソレーターに分類されます。
球面すべり支承は、図のように、おわん型のすべり板が上下にあり、その中間には、自由に滑る金属の塊「スライダー」があります。
地震で建物が揺れたときに、スライダーが移動し、地面の揺れが建物に伝わりにくくなっています。地面が大きく揺れても、建物はあまり揺れません。
すべり板の形状がおわん型ですので、360度、どの方向の揺れに対しても、同じ免震性能が得られます。そして、地面と建物の位置がずれると、建物の自重によって、建物が元の位置に戻るようになっています。
球面すべり支承の構造は、剛すべり支承と似ています。剛すべり支承のすべり板が上下にあるような構造です。
球面すべり支承のメリットは、構造計算がとても簡単らしく、免震オイルダンパーや鋼材ダンパーなどの設置が必要ないとされています。その分だけ、免震点検のコストも軽減できます。
球面すべり支承のデメリットは、金属のスライダーだけで建物を支えるため、縦揺れの地震に弱い可能性があります。そのためか、高層建築には向いていないとされています。
球面すべり支承は、写真のように、すべり板内部に異物が入り込まないように、隙間全体がゴムで覆われています。このゴムは、大きな地震があり、球面すべり支承が動作したときに外れることが予想されます。
全体を覆っているゴムをめくると、中にまたゴムがあります。このゴムは、自転車のチューブのようになっていて、すべり板の上下に設置されて、隙間ができにくくなっています。このゴムの隙間に指を入れて押さえると、かろうじて内部を見ることができます。
球面すべり支承の点検では、金属部分が発錆していないか、ボルトが緩んでいないかなど、その他の免震装置と同様の点検をします。それに加えて、球面すべり支承特有の点検を行います。
それは、球面すべり支承にファイバースコープを挿入して、内部に異物が入っていないかを点検することです。
異物とは、ゴムの隙間から侵入した砂のようなものや、水の侵入が考えられます。
球面すべり支承の物件数は、まだ少ないですが、構造計算が簡単なので、設置条件が合えば積極的に取り入れる建物が増えるのではないかと思います。
マテリアルリサーチは、このような新しい免震装置の点検にも積極的に取り組んでおります。
球面すべり支承の免震点検は、こちらのページをご覧ください。
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