免震建物の点検を行うときに、そのチェック項目として「免震クリアランス計測」があります。ここでは、免震クリアランスについてご説明し、 免震クリアランス計測の大切さをお伝えいたします。
免震建物は、免震装置に隔てられて建物側(免震側)と地面側(非免震側)に分かれています。免震装置は、通常は免震層と言われる階層に設置されていて、免震ゴムやすべり支承といった免震装置によって建物が支えられています。
強い地震が発生すると、地面側は大きく揺れますが、免震装置に支えられている建物側はあまり揺れません。そのため、建物側と地面側の構造物が、地震の揺れに合わせて近づいたり遠ざかったりします。
このとき、もし建物側の壁と地面側の壁に適切な隙間がなかったら、壁同士がぶつかってしまいます。
免震クリアランスとは、地震による大きな揺れが発生したときに、建物側と地面側の構造物や設備がぶつからないように空けられた隙間のことです。
免震クリアランスにどれぐらいの隙間を設計すればよいのかは、免震装置の性能によって異なります。例えば、データセンターの建物のように、大きな地震が発生しても、建物をあまり揺らさずに、揺れが収束することを優先する免震装置であれば、免震クリアランスは小さく設計することができます。その逆に、免震マンションのように、建物が大きく揺らして建物内のダメージを最小にするように設計されることもあります。
一般社団法人免震構造協会では、設計クリアランスと最小クリアランスについて定義されています。建物の設計によってこれらの免震クリアランスの寸法は異なります。
免震クリアランスを免震点検する場合は、建物側と地面側の距離を調べるだけではありません。免震層内にはたくさんの設備配管が設置されています。それら設備配管と壁の距離、設備配管同士の距離を計測し、それらの寸法が設計値以上確保されているかを点検します。
また、建物側と地面側の隙間を埋めるエキスパンションジョイントがあります。エキスパンションジョイントは、大きな地震が発生すると板が少し持ち上がり、通路が壊れてしまうことを防ぎます。ところが、大きな地震が発生した場合、持ち上がったエキスパンションジョイントがさらに移動し、壁に激突してしまうこともあります。このように、エキスパンションジョイントと壁との免震クリアランスを計測することも大切です。
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