免震装置には免震ゴムや免震ダンパーなど、さまざまな種類がありますが、すべての免震装置は必ずボルトで取り付けられています。
免震装置によって、ボルトの大きさは異なりますが、大きなものであれば、手のひらサイズのものがあります。
そのような大きなボルトでも、緩んでしまうことがあることを、ご存知でしょうか。しかも、大きなボルトほど緩みやすい傾向があります。
免震装置のボルトが緩む原因は、おそらくですが、建物の微振動です。建物は小さな地震や風で揺れることがあります。建物の近くを大きな車が通過しただけで、その振動が建物に伝わることもあります。
そのような建物の振動によって、免震装置のボルトが少しずつ緩んでいきます。比較的緩みやすいボルトは、鋼材ダンパーのダンパー部を止めているボルトです。おそらく、他の免震装置と比べて、ダンパーは振動が多いのでしょう。
免震点検では、基本的に全装置のボルトの緩みをチェックします。チェックは、ボルトのマーキングのズレを目視で確認し、触診でボルトを回してみます。
マーキングとは、ボルトの頭からフランジ部まで一色線に描かれた線のことです。この線がずれていたらボルトが緩んでいる目印になります。
触診をする理由は、マーキングの位置が合っていたとしても、ボルトが一周している可能性があるためです。もし、ボルトが一周していたら、手で回ってしまうぐらい緩んでいるためです。
免震装置1基に対しチェックシートが1枚あります。もし、300基の免震装置があれば、チェックシートは300枚になります。もし、ボルトの緩みがあれば、そのチェックシートにチェックを入れ、後日提出する報告書にまとめます。
免震装置のボルトが緩んでしまったからといって、すぐさま免震装置の性能に影響はありません。免震装置はたくさんのボルトで固定されているため、1本のボルトが緩んでいても、免震装置が外れてしまうことはないためです。
免震ゴムであれば、その上に建物の重量がかかっています。免震鋼材ダンパーのダンパー部を止めているボルトが緩んだとしても、すぐさまダンパー部が外れてしまうことはないためです。
また、毎年免震点検をしている建物であったケースですが、前年度のチェックではボルトの緩みがあったにもかかわらず、今年はボルトが自然に締まっていたこともあります。
とは言え、ボルトの緩みを放置しておくことは問題です。なるべく早めに、ボルトを増し締めし、ボルトにマーキングするといったメンテナンスが必要になります。
免震装置のボルトを増し締めするための道具は、トルクレンチです。トルクレンチは、設定したトルクでボルトを締めることができます。その設定値には、仕様書に記載されているトルク管理値を採用します。
免震オイルダンパーを固定するためのボルトは、手のひらよりも少し小さいぐらいの大きなボルトですが、とある現場では1,000kN・mという大きなトルクで締めたことがあります。
トルクレンチは、ボルトの寸法に合わせてソケットを交換して使用します。あらかじめ、免震装置に使用されているボルトの寸法を把握しておく必要があります。
ボルトの増し締めを行ったら、ボルトにマーキングを入れ直します。
ボルトの増し締めをするタイミングには、次の2種類あります。免震点検でボルトの緩みが発見されたら、その後日に増し締めを行う場合と、次回の免震点検の日にトルクレンチを持ってきて増し締めを行う場合です。
後日に増し締めを行うことがスタンダートです。次回の免震点検の日に増し締めを行う場合は、免震点検を毎年行っている現場に限りますが、免震点検と増し締めを同時に行うことでコスト削減につながります。
免震点検のみならず、免震装置のボルト増し締めも当社にお任せください。ボルトの増し締めについては、こちらをご覧ください。
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