とある免震病院でのエピソードです。目視で点検を行う通常点検は、毎年、一級建築士にて実施されていました。竣工から5年が経過し、計測を伴う定期点検が必要だということでしたが、その一級建築士は点検器具を持っていなかったので、当社にご依頼がありました。
免震点検を行う人は、一般社団法人日本免震構造協会(JSSI)によると一級建築士もしくは免震建物点検技術者であることが推奨されています。しかし、一級建築士は建築物の専門家ですが、免震点検の専門家ではないこともあるという事例です。
当社のような、免震建物点検技術者を取得していない人が点検をしてこられた場合は、ある程度、酷い状態であることが予測されます。この免震病院も、案の定でした。
なんと、免震点検を開始してたった3分で、指摘事項を発見してしまいました。指摘事項とは、基準に反する箇所のことです。
ここで発見した指摘事項は、「クリアランス不足」というものです。免震クリアランスとは、地震による大きな揺れが発生したときに、建物側と地面側の構造物や設備がぶつからないように空けられた隙間のことです。(詳細はこちらのページをご覧ください。)
結局、当社の免震点検を終えた後、トータルで50箇所以上の指摘事項が発見されました。
免震層内に、侵入防止用ネットが設置されて、人が容易に入れないように区画されている場所がありました。そのネットは、明らかに後付けされたものでした。
ネットを固定するために、ネットの両端には棒が立てられていました。その棒は、免震側の躯体と非免震側の躯体のそれぞれにボルトで固定されていました。
もちろん、地震があったら壊れてしまいます。
「このネットは仮設だから良い」ということで、地震で壊れても問題としない、破損許容の考えもあるが、点検報告に記載しておく必要があります。また、地震で壊れたときに、免震装置を傷付けないようなものかどうかを確認する必要もあります。
何よりも、お客様がそのことを把握できているかどうかが大切になります。
免震層内に、機器を増設する場合は、免震に詳しい建築士や免震点検のプロに確認してもらうことをお勧めします。
一級建築士は建築物の専門家ですが、今まで、どういった基準で点検を行っていたのか、目を疑うばかりでした。
この免震病院の指摘事項の事例としては、次のようなものがありました。
免震点検のことを知らない人は、何を指摘事項とすべきか、何を報告したら良いのかわからないと思います。免震点検は、免震点検のプロに依頼することを強く勧めます。
免震点検の内容は、特記仕様書に準じて行います。特記仕様書は、建築士が免震装置を設置したときに意図したことに基づいて、どのように、どのような周期で点検したら良いのかが記載されています。
もし、特記仕様書が見当たらない場合や、免震点検の内容が書かれていない場合は、JSSIの免震建物維持管理基準にしたがって点検を行うと良いです。免震点検のことが書かれていたとしても、点検の方法があいまいだったり、すべて記載されていなかったりした場合も、免震建物維持管理基準に基づいて点検することになります。
要するに、免震点検は、特記仕様書の点検内容とJSSIが推奨する点検方法の両方を知っていないとできません。
免震装置点検のことなら、マテリアルリサーチにご相談ください。
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