2016年4月14日から1週間以内に、震度5弱から震度7の強い地震がなんと20回以上も熊本地方を襲いました。それにより、熊本城の石垣が崩れたことがニュースで何度も取り上げられました。
大きな地震があった後は、免震装置の応急点検を行うことが通例となっています。大きな地震の後、余震が収まり、現地のライフラインの復旧に取り掛かり、人々の生命の安全性を確保された頃に、免震装置の応急点検に入るタイミングになります。
大きな地震発生のニュースが入ると、当社では関係者に連絡をしつつ、応急点検がいつ入っても良いように準備をします。
熊本地震では、2カ月経過した頃に、免震装置メーカ様より応急点検のご依頼をいただきました。免震点検する建物は、いくつもありましたので、長期間の出張になります。
当社は東京に事務所があるため、点検スタッフは遠く離れた熊本まで移動する必要があります。もちろん、熊本空港は利用できません。羽田空港から福岡空港まで飛行機で移動し、その付近で宿泊することにしました。熊本県内のホテルはいろいろな方面からの支援者で予約がいっぱいでした。
博多から熊本までは、電車が運休しているため、レンタカーを借りて自動車での移動になります。
現地での食事の調達は期待できませんので、博多のコンビニで食料を調達しました。
博多から九州自動車道に入り、目的地のインターを目指しました。ところが、手前のインターで高速道路を降りるように促され、そこから国道3号線を通ることになりました。まだ熊本市付近の高速道路の橋梁がダメージを受けているのでしょう。高速道路の復旧は、広範囲の工事が必要になるので時間がかかります。
インターを降りてから熊本市街までの幹線道路は損傷がほとんどなく、車の流れもスムーズでした。インターを降りてからしばらくは、建物の損害が見られず、「本当に大地震があったのだろうか?」と思うぐらいでした。
熊本市の街が近づいた瞬間、家屋がすべて倒壊していたと言って過言ではない、悲惨な光景がありました。幹線道路は問題なく移動できましたが、そこから1本中に入ると、道路がデコボコになって自動車で移動できない道もありました。
仕事柄、震災後の光景には慣れていますが、現地に入ると緊張感が走ります。「すべての建物に免震装置が入っていたら」と感じずにはいられませんでした。
免震点検を行うビルがある場所は、比較的道路の状態が良く、すんなり行ける地域でした。場所によっては橋が使えなく、入場規制がかかっている地域もありました。
すでに現地入りしている免震装置メーカのお客様から、規制がかかっている道路の情報を事前にいただいていたので、移動ルートをあらかじめ考えておくことができました。
熊本市街では、9棟の免震建物を応急点検させていただいた。崩れている建物が多い中、免震建物はすべて無事に建っていました。免震建物は外観にあまり変化が見られませんでしたが、その周りの建物はフェンスが壊れていたり、塀が倒れていたりしていました。免震装置が巨大地震でも機能していることに感動しました。
ケガキ式地震変位記録装置製作に描かれた地震の軌跡を確認すると、大きく動いた建物では400mm近く動いていました。
免震ゴムや鋼材ダンパーなどの免震装置の損傷は、想定通りでした。エキスパンションジョイントも予想通り壊れていました。一部の免震装置は交換が必要だと思われますが、交換するかどうかは建物保有者のご判断になります。
免震建物外周部に後付けされた手すりや塩ビ配管が、はやり壊れていました。それらは「大地震でぶつかる可能性がある」と以前の免震点検で指摘していたものでした。平時の免震点検で指摘事項がなかった建物や、指摘事項を改善していた建物は、外観や装置の影響は少なかったです。
免震建物でも被害があった建物は、JSSI基準がなかった時代の初期の頃の免震建物でした。その免震建物は、建物と外周のフェンスのクリアランスが不足しており、地震発生時に建物がフェンスを押し倒して、駐車していた自動車にのしかかっていました。
近年に建てられた免震建物は、きちんとクリアランスを確保した管理値がとられている建物が多いので、フェンスを後付け工事していなければ問題ないといえます。
震源地に近い免震建物の場合は、最初にやるべきことは救助です。免震建物といえども、建物が揺れることがあり、建物利用者が負傷していることもあります。
次に、建物を人が出入りする場所の安全を確認します。外壁や看板の落下がないか、通路に落下物が堆積していないかなど、建物には震災直後の安全確認マニュアルがあると思いますので、そちらをご参照ください。
巨大地震発災直後に確認していただきたいのがエキスパンションジョイントです。強い地震の場合は、エキスパンションジョイントが跳ね上がっていたり、損傷していたりして、通行ができない場合があります。そういった場所にはカラーコーンを立てるなどして、危険を促します。
当社の応急点検は、ある程度の通行手段が確保されてきた段階でご依頼ください。応急点検の事前に、免震層入口の通路確保や入口のドアや蓋が開くかどうかなど、免震層に人が入ることができるかどうかのご確認をお願いいたします。
この記事が、誰かの震災対策のお役に立てたら幸いです。
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