免震装置の不正事案が取りざたされ、免震装置の交換作業が進んでいます。そのさなか、国土交通省が「免震材料の交換改修工事中の建築物の安全性ガイドライン」を平成27年7月に発表していました。
免震装置の交換は、建物をジャッキアップして行います。この発表は、免震装置の交換作業が安全にかつ合理的に行われるように実施することを促すものです。
このガイドラインは、一般住民や建物利用者にはよくわからない内容があるのではないかと思い、免震ゴムの交換工事の流れを詳細にご説明いたします。
免震装置にジャッキが設置される前に、交換前点検(計測点検)を行います。定期点検で行う計測点検と同じです。
装置の水平変位計測や鉛直変位計測、四隅の免震クリアランス、下げ振り装置による建物位置の計測を行います。
免震層内の何か所かと、交換対象の免震ゴムの近くにジャッキを設置します。建物を持ち上げることができるジャッキが存在することにビックリされたことでしょう。
ジャッキの下側が滑り板になっているので、作業中に建物が地震で揺れてもジャッキが外れないようになっています。
※ 図はガイドラインより抽出しました。
免震ゴムのフランジ部に設置されているボルトをすべて緩め、建物をジャッキアップします。ジャッキアップする高さは、免震ゴムに荷重がかからなくなった状態で5~10mm程度の高さまでジャッキアップするようで、免震ゴムが取り出せる程度を持ち上げます。
免震ゴムはものすごく重たいので、手では動きません。免震ゴムを運搬し交換するためのフォークリフトのような装置を用いて交換します。その装置を2台用意し、片方には新しい免震装置を設置するために、もう片方には古い免震装置を取り外すために用います。
フォークリフトの高さを調整し、古い免震ゴムを持ち上げて引き抜きます。
次に、新しい免震ゴムが乗せられたフォークリフトの高さを合わせて挿入していきます。挿入するときは、高さに注意しつつ、傷つけないように注意します。
挿入し終えると、ガイドラインでは上部のボルトを先に取り付けるようです。
免震装置の位置を調整しながら、下部ボルトを締め付けます。新しい免震装置の表面はベニヤ板などで養生されているので、それを取り外します。
位置が固定されたら、ジャッキを降ろします。トルクレンチを用い、ボルトを管理値のトルクで増し締めします。
その後、ジャッキを解体・撤去します。
その後、交換前に行った点検と同じ計測点検をし、交換前と後で数値を比較し、問題のないことを確認します。
交換前点検ではジャッキが設置されていない状態で、交換後点検ではジャッキがすべて取り外されている状態で点検を行います。点検前にジャッキの有無の確認を行います。
交換前点検と交換後点検では、同じ位置での点検が必要です。点検前にマーキングを必ず行って、マーキングの位置で交換前後に計測します。
免震装置は全面塗装がしてあるので、塗装の膜厚を考慮する必要があります。古い免震装置の塗装が剥がれていたり、錆びていたりしたら、計測ポイントの膜厚を考慮して、交換前後の計測結果を比較する必要があります。
稀に、構造物と免震装置の間にスペーサが入っていることがあります。ジャッキアップ後に、フランジ部にスペーサが入っていなかったかどうか、異物の挟み込みがないかをチェックが必要です。
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