免震点検いろは

大地震発生直後に免震装置のチェックすべき箇所

内閣府が発表している「大規模地震発生直後における施設管理者等による建物の緊急点検に係る指針」によると、「建物の所有者等(おそらく、管理者を含めている内容だと思います)は、建物に滞在する者の安全を確保するために、早急に建物の安全を確認した上で、建物内での待機・建物からの避難を判断する必要がある。」と記載されています。そのためにも、大規模地震が発生したら、建物のどの箇所のチェックをどのように行うのかを決めておく必要があります。

以下に、この指針を踏まえて、大規模地震に遭遇した免震建物において、発災直後に免震装置のどの部分をチェックしたらよいのかをまとめました。

内閣府発表の指針やこの記事、専門家の意見などを参考にしながら、建物独自のチェックシートを作成してください。チェックシートを作成したら、大地震直後を想定した訓練をすることも大切です。

実際に大規模地震が発生直後は、建物の所有者や管理者も被災者になります。ご自身の安全を守りながら建物のチェックすることが大切です。

免震装置のチェック箇所

エキスパンションジョイントのチェック

エキスパンションジョイントの点検

まず、エキスパンションジョイントのチェックです。エキスパンションジョイントは、免震側(建物側)と非免震側(地面側)の通路部分です。

大規模な地震が発生した直後に、免震建物が大きく揺れた場合、エキスパンションジョイントが跳ね上がっていたり、損傷していたりする可能性があります。エキスパンションジョイントが損傷している場合は、その部分にカラーコーンを立てるなどして、危険を促します。

ケガキ式地震変位記録装置のチェック

ケガキ式地震変位記録装置の点検

ケガキ式地震変位記録装置は、免震層内に設置してある地震の軌跡を描くための装置です。この軌跡が大きなものであれば、免震装置のボルトが緩んでいたり、免震側と非免震側のどこかがぶつかっていたりする可能性があります。ケガキ式地震変位記録装置の軌跡が大きい場合は、後日、免震点検業者に応急点検を依頼した方が良いと言えます。

大きな地震の被害が各地であったとしても、建物が建っている場所の揺れは小さいこともあります。もし、ケガキ式地震変位記録装置の軌跡が小さい場合は、直下型の縦揺れの場合もあります。免震建物にもかかわらず、思ったよりも建物が揺れた場合は、この縦揺れの可能性もあります。ケガキ式地震変位記録装置の軌跡が小さく、建物もほとんど揺れていない場合はご安心ください。

下げ振り装置のチェック

免震下げ振り装置の点検

下げ振り装置は、免震側と非免震側が竣工時点検時からどれぐらいズレているのかを調べるための装置です。ケガキ式地震変位記録装置が設置されていない免震建物であっても、下げ振り装置である程度の地震のダメージを予想することが可能です。

下げ振り装置で建物位置をチェックし、ゼロ点からのズレが大きい場合は、応急点検をお勧めします。

また、仮に免震側と非免震側が10cmずれたままで止まっていたとします。しかし、すぐさま建物が倒壊するのかというわけではありません。毎年、定期的な免震点検を行っていれば、ズレの傾向を確認することができるので、10cmのズレが問題なのかどうかを判断しやすいです。

どちらにしても、建物が元の位置に戻らない場合は、応急点検の依頼をお勧めします。

免震層内のチェックでの注意点

まず、免震層内に設置してある免震装置をチェックする場合は、余震が収まってからにしてください。突然に大きな余震があった場合に、免震クリアランスに挟まれたり、突起物が襲ってきたりする可能性があるためです。

免震層内に入るときは、ヘルメットや懐中電灯、作業着、軍手を着用し、外部と連絡できるものを持って入いるようにしてください。また、必ず2名以上で入るようにお願いします。

定期的に免震点検を行っていない場合は、免震層内が酸欠になっている恐れがあります。特に免震層内に入る入口が、マンホールタイプのものです。場合によっては、酸素濃度を計測しながら免震層内に入ることをお勧めいたします。免震層内の酸素濃度が低い場合は、免震層内を充分に換気する必要がります。

マンホールからタラップを降りていく場合には、安全帯の着用をお勧めいたします。

免震層内は多湿ですので、夏場であれば熱中症対策をしてください。

なぜ専門業者にすぐ依頼できないのか?

大規模な地震が発生した直後は、その地域のすべての人が被災すると言ってよいでしょう。これは、免震点検業者である当社も同じことが言えます。

当社は都内にあるため、都内の免震建物であればすぐさまチェックをしに行くことができるかもしれませんが、それは道路や電車を利用できる場合に限られます。道路は幹線道路ほど緊急車両が優先になりますし、電車は電気がないと動きません。はたまた、当社の免震建物点検技術者が被災をして、出社できない可能性もあります。

このように、大規模な地震が発生した直後は、建物の専門家がすぐに点検できないケースが想定されます。

そのため、建物の専門的知識を持っていない管理者等の者でも、緊急時には建物を使用しても良いのかどうかを判断するためのチェックシートを作成しておくことが推奨されています。

分譲マンションの場合

免震の分譲マンションであれば、マンションの管理組合が管理会社に管理を委託していることでしょう。さて、大規模地震が発生したら、免震の分譲マンションの緊急点検は管理会社が行うことが可能かどうかは、タイミングによります。

大規模マンションのように管理人さんが常駐している場合や、小さなマンションでも昼間の管理人さんが在室しているときに大規模地震が発生したら、管理人さんはすぐさま建物のチェックを行うことが可能です。

しかし、管理人さんが帰宅しているときや、外出しているときに大規模地震が発生したら、管理人さんがマンションに戻ってくることが不可能になる場合があります。

免震マンションでも、想定外の大規模地震に遭遇してしまったら、基礎部分が壊れてしまう可能性もあります。指針にも書いてあるように、構造躯体を目視で確認し、危険と判断される場合は、マンション全体を使用不可と判断すべきです。

この記事をご覧になられた免震マンションを所有される方は、管理組合の総会等で大規模地震直後のことを想定し、対応を話し合った方が良いはずです。

大きな地震の直後で、免震装置の点検箇所がご不明な場合は、当社までお気軽にお電話ください。確認する箇所などをアドバイスさせていただきます。

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